「きつさ」は根性で決まらない ― RPE(主観的運動強度)の正体
最新研究が示す、あなたの感じる「きつさ」が映すのは"痛み"であって性格ではない
「同じペースなのに、今日はやけにきつい」。それを「メンタルが弱いからだ」「気合いが足りない」と片づけていませんか。2026年の最新研究は、その「きつさ」の正体に意外な答えを出しました。
結論:RPEは"性格"ではなく"痛み"を映している
ランニングの強度管理に欠かせない指標が RPE(主観的運動強度)。「どれくらいキツかったか」を自分の感覚で点数化するもので、心拍やGPSが無くても使える優秀なツールです。
でも長年、こんな疑問がありました。「RPEって結局、気の持ちようでは?」「メンタルが強い人は同じ運動でも楽に感じるのでは?」
Bojicら(2026, Scientific Reports)の研究は、ここに明快な答えを出しました。
主観的な「きつさ」を決めていたのは、性格でも不安傾向でもなく、運動中に生じる"痛み"だった。
研究の中身
研究チームは、屋外の持久系イベントに参加した 144名のレクリエーション持久系アスリート(トレイルランナーやハイカーら)を対象に、横断的に調べました。
測定したのは大きく3種類。
- 痛み:運動で生じた痛みの強さ(最大・平均)と不快さ
- 心理特性:性格傾向、痛みの破局的思考、不安感受性、不安・抑うつ症状
- 負荷とRPE:努力で補正したペースと時間(外的負荷)、そしてセッションRPE(sRPE)
つまり「きつさ(sRPE)は、痛み・心理・実際の運動量のどれで説明できるのか?」を同時に比べたわけです。
主要な結果
- 痛みだけが、sRPEと一貫して結びついていた。 痛みが1段階強まるごとに、主観的なきつさは約13〜19%増加。
- この関係は、年齢や経験などの要因をすべて調整しても有意なままだった。
- 一方で、性格・不安傾向・抑うつといった心理特性は、きつさの説明にほとんど寄与しなかった。
- 外的負荷(ペース×時間)よりも、その場の痛みのほうがsRPEをよく説明した。
著者らは「sRPEは外的負荷や心理特性よりも、運動中の痛みを主に反映している可能性がある」と結論づけています。
何が言えるのか
ここから、ランナーにとって大事な示唆が3つ出てきます。
- 「きつい」は気のせいでも根性不足でもない。 それは身体が出している実信号(痛み・負担)に近い。無視せず、データとして扱ってよい。
- だからRPEは負荷管理に使える。 その日の「きつさ」が高いのは、身体に余分な負担がかかっているサイン。ペースや量を素直に調整する根拠になる。
- 「メンタルで押し切る」は本質的な解決ではない。 きつさの背後に痛み=負担があるなら、無理に上書きするより、原因(疲労・故障の芽・オーバーロード)を見に行くほうが賢い。
もちろん注意点もあります。これは横断観察研究なので「痛みがきつさを生む」という因果まで断定はできません。対象もレクリエーションのトレイル/ハイクで、トラックのレースとは文脈が違います。それでも「RPEは主観の気まぐれではなく、身体由来の信号だ」という方向性は、現場感覚ともよく合います。
まとめ
- RPE(きつさ)を主に決めていたのは、性格や不安ではなく"痛み"だった
- 痛みが1段階上がると、きつさは約13〜19%増える
- だからRPEは「身体からの実信号」として負荷管理に使ってよい――「気合いが足りない」で片づけない
トレーニングに活かすなら 「きつさ」を毎日の数値として残すと、調子の波が見えてきます。OptiRun BASE では、セッションRPE(主観的強度×時間)を内的負荷として記録し、ACWR(急性慢性負荷比)に反映。「今日はやけにきつい」が続くときに、負荷をかけ過ぎていないかを客観的に確認できます。
参考文献
- Bojic, S., et al. (2026). Perceived exertion reflects exercise-induced pain rather than psychological characteristics in recreational endurance athletes. Scientific Reports. https://doi.org/10.1038/s41598-026-55769-2