ATHLIVIA Running Science
#19トレーニング負荷2026-09-09

スロージョグだけでは、なぜ速くならないのか

同じ104時間と102時間。両極化群はVO2peakを11.7%伸ばし、高量・低強度群は何も変わらなかった

スロージョグだけでは、なぜ速くならないのか
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「ゆっくり走れば速くなる」と聞いて、毎日ジョグのペースを落とした。三か月経つが、レースのタイムは動かない。

結論を先に

低強度のジョグは、持久力の土台として欠かせません。しかしそれは量を積むための手段であって、それ自体が強い刺激なのではありません

このことを最も明快に示したのが、48名の持久系アスリートを9週間追った無作為割付の比較試験です。両極化群(低強度68%・高強度26%)は総トレーニング時間104時間、高量・低強度群(低強度83%・高強度わずか1%)は総トレーニング時間102時間。ほぼ同じ時間を費やしています。

結果は正反対でした。

同じだけ走っても、高強度が26%あるか1%かで、9週間後がここまで分かれた。「ゆっくり走った総量」が効くのなら、こうはなりません。

そもそも「スロージョグ」の原典は何だったのか

日本で広く知られる「スロージョギング」は、福岡大学の田中宏暁氏の研究室から出てきた言葉です。その代表的な無作為化比較試験(2017年)を見ると、世間の理解とは少しずれた設計が見えてきます。

対象は地域在住の高齢者81名(平均70.8歳)。12週間を完了したのは75名(スロージョグ群37名・対照群38名)でした。プロトコルはこうです。

結果は、AT時の有酸素能力が+15.7%(対照+4.9%、p < 0.01)、椅子立ち上がりスコアが+12.9%(対照+4.5%、p < 0.05)、大腿部の細胞内水分量がスロージョグ群のみ+9.7%(p < 0.05)、皮下脂肪と筋間脂肪がスロージョグ群のみ有意に減少(p < 0.01)。高齢者の健康・体組成の改善としては、はっきりした効果です。

(※この論文は出版社クローズドのため、プロトコル遵守率や効果量の詳細までは確認できていません。)

ここで押さえておきたいのは三点です。

  1. 対象は高齢者であって、競技ランナーではない
  2. 強度は「ラクならいい」ではなく、ATという閾値に置かれている
  3. 1分ジョグ+1分歩きの断続であって、連続長時間走ではない

つまり原典は「高齢者が安全に閾値強度へ届くための、よく設計されたインターバル処方」でした。「とにかくゆっくり、長く走ればいい」という理解は、そこから離れたところで広まった解釈です。そしてこの研究は、競技者が速くなるかどうかを検証していません

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